TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

奴が殺人者だ

1958年、樫原一郎「汚れた刑事」原作、東宝、橋本忍脚本、丸林久信監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

麻薬取締法の要約が流される。

新宿淀橋署の刑事長大利根徹夫(土屋嘉男)の妹、礼子(横山道代)は、朝から機嫌が悪かった。
恋人の石原と、最近全く連絡が取れなくなった事が原因らしい。

そんな妹を尻目に、出勤した大利根は、新宿の愚連隊の水死体が上がったとの連絡を受け、鈴木刑事(中丸忠雄)と共に現場へ出かける。

32口径の拳銃で射殺されて川に遺棄されていた死体は、大利根が以前洗った事があるジョーこと上谷丈吉(堺左千男)と言う男だった。

その当時、ジョーの身元引き受け人となったのは、山尾(清水元)という弁護士だった。

その時、ジョーが暴れたバー「R」のマダム則子(淡路恵子)に話を聞きに行く大利根だったが、新たな情報は得られない。

オカマバー等への聞き込みも空振り。

しかし、チンピラの力(谷晃)からの情報で、ジョーが、生前、崔郭全という人物と付き合っていたと知った利根川らは、麻薬密売の前科があったその崔も、1ケ月前の6月25日、千葉県に近い江戸川区の一角で水死体として見つかっていた事を思い出す。

その際、事情を聞きに行って、冷たくあしらわれた、おでん屋をやっている崔の女房からの情報で、ユウさんという男の存在が浮かび上がる。

ジョーの情婦だったと言う女に、その男の情報を聞きに行くが、彼女は何も知らないらしい。

捜査本部では、そのユウさんなる男の所在を突き止める事に全力を傾ける方針が決まる。

そんな中、利根川家では、礼子が、義姉である大利根の妻(東郷晴子)に、親友の杏子(峯京子)を紹介していた。
何でも、近々、杏子は、商事会社勤務の岡崎と言う男性と結婚が決まっているのでうらやましいというのだ。

聞き込みを続けていた大利根は、とある交番の中に意外な人物の顔を発見する。

チンピラ二人(加藤春哉、桐野洋雄)と喧嘩してパクられていたのは、大利根が深川署時代、45口径の銃で二人を殺し網走送りになった直(佐藤允)という人物だった。

直をすっかり見直したらしいチンピラたちは、近くのキャバレーへくり出して、女の子たちにちょっかいを出すが、他の若い衆から因縁をつけられる、

しかし、直があっという間に相手をノしてしまったので、その場で飲んでいたチンピラの兄貴分立花(田武謙三)に目をつけられる。

その立花は、バー「R」の二階で、マダムから「チーフ」と呼ばれているバーテンダー(笠間雪雄)からヘロインを入手すると、直を試しに運び人として使ってみる事にする。

その直が公園で受渡しの現場を張り込み中の警察に捕まる様子を、立花は近くで冷静に観察していた。
直が渡されていた白い粉は、実はメリケン粉だったのだ。

時期釈放されて来た直が、警察に何もしゃべらなかったのを認めた立花とバーテンは、直に、殺しを請け負わないかと言い出す。

バーテンが殺す相手として示した写真は、ユウさんこと湯本(伊藤久哉)という男のものだった。

やると返事をした直は、5万の現金と、竜(天本英世)という無気味な男を紹介される。

竜は、重度のペイ中(麻薬中毒患者)だった。

その頃、すでに二人で住む新大久保の新居が決まったのに、結婚相手の岡崎が帰って来ないと心配した杏子は、彼が勤める会社の沢田社長(山茶花究)に相談に行っていたが、尾道の会社との仕事がこじれているらしく、こちらでも連絡が取れないと言う返事。

実は、沢田はバー「R」のマダム則子の兄であり、則子の亭主結城甚造(林斡)とも繋がっていた。

一方、湯本を探す直と竜は、何の手がかりを見つける事が出来ず、竜の禁断症状は日に日にひどくなって行っていた。
どこか互いに信用できない二人だったが、幾日も行動を共にする内に、何となく気心が知れて来た事もあり、ある川のほとりで、竜は、以前、ここでジョーと言う男を射殺した事を直に打ち明けるのだった。

そんな二人が泊まる旅館を、利根川と鈴木たち警察は、毎日交替で見張っていた。

ある日、直と竜を迎えに来た車には、沢田が乗り込んでいた。

沢田が言うには、香港に逃げていた湯本が、今日羽田に戻って来ると言う。

彼らが乗った車の後には、警察の車が尾行を続けていた…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

日本では禁止されている囮捜査をサスペンスフルに描く、いわゆる「潜入捜査もの」である。

ミステリに馴染みのある人なら、冒頭から伏線的描写がちりばめられているので、途中から、薄々その実態が見えて来る仕掛けになっている。

土屋嘉男扮する大利根刑事の妹役、横山道代は、タイトルでの表記に(新人)とある事から、これが映画デビュー作なのかも知れない。

この映画の主役は、一見、土屋嘉男か、佐藤允のどちらかのように思えるが、途中からその二人をすっかり喰ってしまう人物が現れて、後半はすっかり、この人物がメインのようになってしまう。

天本英世である。

そのヤク中ぶりは壮絶の一言。

彼の代表作の一本と言って良いかも知れないほどのインパクトがある。

この天本英世の演技を観るだけでも、この作品は価値があると思えるほど。

さらに、特撮マニアにとって注目すべきは、土屋嘉男と中丸忠雄がコンビを組んでいる事だろう。

「ガス人間と電送人間」の共演である。

中丸忠雄が悪役でないのも珍しい。

加藤春哉が演じている、どこか飄々とした気の弱そうなチンピラも印象的。